「育成就労」制度とは?技能実習・特定技能との違いや活用メリットなどを解説

育成就労制度とは

制度の概要

育成就労制度とは、日本での就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、人手不足が深刻な特定産業分野における人材を確保することを目的とした制度です。これまでの技能実習制度では、制度目的と実態の乖離や外国人の権利保護などの課題が指摘されていました。そのような問題に対する改善策の一環として、技能実習制度を廃止し、人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度を新たに創設することとなりました。

いつから始まる?

育成就労制度は2027年からの施行が予定されていますが、具体的な施行日は現時点では未定です。

対象となる職種、分野

育成就労制度の対象分野は、特定技能1号の対象分野と原則として一致します。現在、特定技能1号の対象となっている分野は介護、工業製品製造業、飲食料品製造業や外食業等の16分野です。

特定技能制度との違い

育成就労制度と似た制度に特定技能制度があります。いずれも外国人労働者を受け入れるための制度ですが、その目的や内容にはいくつかの違いがあります。

 特定技能制度育成就労制度
目的人手不足分野における即戦力となる人材の確保人手不足解消と特定技能への育成
在留期間特定技能1号:最長5年
特定技能2号:上限なし
最長3年
転籍可能一定の条件で可能
対象分野特定技能1号の対象分野 (16分野)特定技能1号の対象分野 (16分野)
日本語能力N4レベル相当以上N5レベル相当以上
特定技能への移行条件 N4レベルの日本語能力+技能検定3級等
もしくは特定技能1号評価試験の合格が必須

育成就労制度で受け入れられる外国人は、入国時点では特定技能外国人が持つ専門性や技能は求められないという点で異なります。つまり制度上、育成就労において技術を身に着け、その後特定技能へと移行する流れとなっています。この2つの制度の連続性により、外国人が日本で就労しながらキャリアアップできる制度がより分かりやすく構築されていると言えるでしょう。

技能実習制度との違い

次に育成就労制度と技能実習制度の違いについて解説します。

技能実習制度も前述の特定技能と同様、外国人労働者を受け入れるための制度ですが、こちらも育成就労制度と比較してその目的や内容に違いがあります。

 技能実習制度育成就労制度
目的技能移転による国際貢献人手不足解消と特定技能への育成
在留期間最長5年最長3年
転籍原則不可一定の条件で可能
対象分野技能実習2号の対象職種・作業 (91職種167作業)特定技能1号の対象分野 (16分野)
日本語能力規定なし(介護はN4相当N5レベル相当以上
技能水準技能実習修了レベル特定技能1号レベル
特定技能への移行条件技能検定3級等もしくは特定技能1号評価試験の合格
(同職種であれば無試験で特定技能1号へ移行が可能)
N4レベルの日本語能力+技能検定3級等
もしくは特定技能1号評価試験の合格が必須

このように、育成就労制度と技能実習制度は、一見似たような制度ですがそれぞれ異なる目的と特徴を持っています。しかしながら、冒頭で解説した通り、技能実習制度は段階的に廃止され、育成就労制度へのシフトすることが決まっています。技能実習制度においてこれまで打ち出されていた「技能移転による国際貢献」という趣旨が無くなり、人材確保が主な目的とされるようになりました。

監理団体は監理支援機関へ名称変更

従来の技能実習制度における技能実習生及び実習実施機関に対する監理団体は、新制度においては『監理支援機関』へと移行し、その独立性を強化する方針が示されています。

背景としては、一部の監理団体における不適正な運営実態が存在することが指摘されており、これを受けて政府は育成就労制度における監理支援機関の許可要件を厳格化し、外部監査人の設置を義務付ける予定です。これにより、不法就労や人権侵害等の問題に対する実効的な対応が期待される見込みです。

既存の監理団体は、監理支援機関への移行に際し、改めて許可申請を行う必要があります。具体的な審査基準等については、現時点では詳細が未定であり、今後の動向を注視する必要があります。」

育成就労制度のメリット

受け入れ企業側のメリット

企業側としては、何よりも人材不足を解消できるということが最大のメリットとして考えられるでしょう。また育成就労制度は、特定技能1号の水準の技能を3年間で習得することを目的としているため、この期間中に外国人労働者を育成し、自社の戦力として育成することができます。特に、特定技能2号への移行を果たすことにより永続的なキャリア構築が可能となり、「生え抜きの現場リーダー」である外国人労働者が今後は益々増えていくのではないでしょうか。

外国人側のメリット

外国人側のメリットとしては、育成就労期間中に技能を習得することで、自身のスキルアップに繋がることが挙げられます。さらに育成就労制度は、特定技能への移行を前提としているため、育成就労期間中に技能を習得し、試験に合格することで、特定技能の在留資格を取得し日本でより長く働くことが可能となります

育成就労制度の注意点

育成就労制度は、外国人労働者と企業双方にとってメリットがある一方で、それぞれの立場において注意点も存在します。以下、代表的な注意点をまとめています。

企業側の注意点

  1. 労働条件や待遇の改善に伴う費用負担の増加
  2. 外国人労働者の転籍のリスク
  3. 受け入れ可能な職種の制限
  4. 制度開始時期が不透明である

外国人側の注意点

  1. 日本語能力N5レベル以上が求められる
  2. 技能習得が不十分な場合は、特定技能への移行ができない可能性がある
  3. 転籍には一定の要件を満たす必要がある

メリットの多い育成就労制度ではあるものの、このように企業側だけでなく、外国人労働者側においても少なからずリスクは存在しています。制度導入に際しては注意点をしっかりと把握しておくことが重要です。

また、上記の説明は画一的なものであり、実際は企業の業種や外国人の経歴など、個々の事例により判断材料が異なります。同じケースは一つとしてないため育成就労制度の利用を進める際には、専門家への相談を検討することをお勧めします。

専門家に相談するメリット

複雑な申請業務をアウトソースできる

育成就労制度は、特定技能への円滑な移行を企図した制度であり、技能実習制度を改編したものであると解釈されます。対象職種・分野は特定技能との整合性を図ることで、中長期的な労働力確保を目的として整備される予定ですが、複雑な制度であるがゆえに「技能実習制度」や「特定技能制度」において豊富な経験を有している専門家に手続きをアウトソースすることが企業様の負担減に繋がるといえるでしょう。

最新の情報をキャッチアップできる

在留資格「育成就労」は現在、主務省令策定段階にあり、詳細については未確定な部分がいまだ多く存在します。最新情報が公開され次第、専門家による見解を参考にすることが、より正確な制度理解の一助となるといえるのではないでしょうか。

当事務所のサポート内容

JAPAN行政書士法人では、外国人雇用企業様向けに、以下のようなサービスを提供しております。

1.特定技能採用支援

特定技能外国人の採用は企業の人手不足解消や中長期的な雇用の実現まで様々なメリットがあります。
適法な受入れに向けて、受入れ可否のチェックや制度活用における企業対応をアドバイスいたします。

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2.セミナー・研修

当事務所では業界団体等を中心に外部でのセミナー・研修を積極的に行っております。
社内担当者向けの研修をはじめとして、業界団体の主催セミナーにて本制度に関するセミナーも実施可能です。セミナー・研修への登壇についてもお気軽にご相談ください。

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3.応募者リーガルチェック

採用候補者の経歴や採用企業での業務内容を総合的に判断して、内定後にビザ取得が可能かどうかを応募段階でチェックいたします。
スポット形式や顧問契約形式など、企業様のご要望に合わせてサポートが可能です。

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4.在留資格(ビザ)申請代行


特定技能ビザの申請に必要な書類の収集や申請書類の作成、入管への提出までを代行いたします。分野によって対応が必要となる協議会加入についても手続き代行が可能です。
面倒な書類作成業務は、経験豊富な専門家にお任せください。

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JAPAN行政書士法人では、2019年の特定技能制度の開始当初から、主に特定技能のビザ申請業務に積極的に取り組んでまいりました。これまでに年間1200件以上の特定技能申請を行ってきた実績があり、この分野における豊富な経験と知見をもって育成就労制度分野への支援に力を入れていく所存です。特定技能への移行も視野に入れつつ、育成就労制度の活用をお考えの方は、当事務所まで是非ご相談ください