特定技能制度とは
制度の目的・背景
特定技能制度は2019年4月より導入され、一定の専門性と日本語能力を持った即戦力の外国人労働者を雇い入れる事ができる制度です。人口減少等により、日本国内で慢性的な人手不足の懸念があるなか、特定の分野における極端な労働力不足を解消する目的で創設されました。
対象となる職種
特定技能制度が創設された2019年当初、対象産業分野は以下の14分野でした。
・ 介護
・ビルクリーニング
・ 素形材産業 (統一前)
・ 産業機械製造業 (統一前)
・ 電気・電子情報関連産業 (統一前)
・ 建設業
・ 飲食料品製造業
・造船・舶用工業
・ 自動車整備
・ 航空
・ 宿泊
・外食
・ 農業
・ 漁業
2024年には 「素形材産業」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連産業」の3分野が「工業製品製造業」に統一されました。また、現在(2025/6)この14分野(工業製品製造業分野に統一後12分野)に加えて以下の4分野が追加され、計16分野で特定技能外国人を雇い入れることが可能となりました。
2024年~
・鉄道
・林業
・木材産業
2025年~
・自動車運送業
2025年には更に「倉庫管理・廃棄物処理・リネン供給」を追加する指針を日本政府が打ち出しており、現在も拡大し続けている制度であるといえます。
特定技能1号と2号の違い
特定技能制度は2段階に分類することが可能であり、特定技能1号、特定技能2号と呼ばれるものとなります。特定技能2号は2023年に対象分野が拡大された制度で、その主な違いを下記にまとめました。
特定技能1号
現在特定技能1号の分野は全16分野あり、基本的に家族を帯同させる事はできません。在留期間に関しては、少なくとも1年に1回以上の更新が求められ、かつ5年間の在留期限が設けられています。
また分野ごとに求められる要件が異なる場合もありますが、基本的に共通して求められる要件として、特定技能1号評価試験(例:飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験)及び日本語能力試験(N4以上)への合格が求められ、技能実習2号を良好修了している場合にはこれらの試験への合格が免除されます。
特定技能2号
現在特定技能2号の分野は全11分野あり、配偶者や子など、家族を帯同させる事ができます。在留期間に関しては、最長3年間の在留期間が付与され、在留期限がないため無期限に在留し続けることができます。
また分野ごとに求められる要件が異なる場合もありますが、共通して求められる要件として、特定技能2号評価試験(例:飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験)への合格や、一定年数(分野ごとに異なる)の管理者的立場としての実務経験(特定技能2号評価試験受験時に求められる)が求められ、特定技能1号とは異なり日本語能力は求められません。この点、技能水準においてかなり高度な技能を有している外国人に認められる在留資格であるといえます。
このように特定技能2号は、より高度な技能を有する人材を雇用することを目的とした制度であることがわかります。また在留期間の制限がなくなり、永住権の取得も現実的になること、家族で日本に滞在することが可能となるなど、外国人にとって特定技能1号よりも魅力的な在留資格と言えるでしょう。
技能実習制度とは
制度の目的 背景
技能実習制度は1993年にアジア各国との経済協力が進む中、日本の技術を学び母国に持ち帰ってもらうことでアジア各国の産業振興や人材育成に寄与するという国際貢献や、その目的にそぐう人材育成を行うという目的で外国人を一時的に受け入れられるよう作られた制度です。
対象となる職種や分野
技能実習は特定技能と異なり、約90種150作業が対象とされており、特定技能よりも数多くの職種や分野が受け入れ可能業種として指定されています。一例としては、
・農業:耕種農業等
・漁業:養殖業、沿岸漁業
・建設業:型枠施工 鉄筋施工 とび等
・食品製造:食肉加工等
などがあります。
技能実習制度の概要
技能実習も特定技能と同じように複数の段階があり、それぞれ要件が異なります。技能実習1号(1年間)を入口に、2号(2年間) 3号(2年間)と段階を経て最長5年日本に在留することができ、その間0から技能や日本語を学ぶことを想定した制度設計となっております。また技能実習2号を良好修了した段階で特定技能1号に移行する事が可能な分野も存在するため、特定技能への移行の前段階として利用する外国人労働者も多く存在します。ただし、技能実習では対象分野に含まれているものの、特定技能1号においては対象となっていない分野もあるため、企業、外国人双方にとって不都合となる制度的一面も存在します。加えて、先述の通り技能実習制度はそれぞれの母国への技能移転が目的となっている制度ですが、実状は日本における労働力不足に利用されている制度でもありました。そこで政府はこれらの課題を克服するため技能実習制度を廃止し、人材確保や特定技能1号への移行が目的である制度として育成就労制度の創設を決定しました。
どちらかを選ぶにあたってのポイント
企業側からの視点①
技能実習と特定技能 、どちらを利用するメリットが企業にとって大きいのでしょうか。結論から申し上げると、特定技能制度を利用することの方が大きいといえます。特定技能は労働力確保を目的として作られており、試験や実績を持った即戦力として外国人を雇用することが可能であるということ、また特定技能2号への移行も狙いやすいことから長期的な雇用が可能であり、人材確保及び育成をすることが技能実習よりも容易であるということが最大のメリットでしょう。それに対し技能実習制度は、特定技能1号に移行できる対象分野が限られており、技能実習終了後も継続的に雇用することが難しい分野もあります。そのため教育費や人件費等を考慮した場合、技能実習制度を利用することのメリットを特定技能よりも見いだしにくいというのが現状です。
企業側からの視点②
外国人としても、技能実習制度を利用することよりも特定技能制度を利用するメリットの方が大きいというのが現状です。先述の通り、特定技能1号から特定技能2号への移行の方が技能実習からの移行より容易なため、特定技能2号での就労も視野に入れた雇用計画を作ることが可能となります。また、特定技能2号を取得する際には管理者的立場としての実務経験が求められることとなりますが、特定技能1号として通常想定される業務に従事しているだけでは要件を満たすことはほとんどありません。そのため採用の段階で、管理者的立場としてより高度な業務に従事することを計画するなど、特定技能2号への移行を見据えたキャリアプランを事前に作成することが重要となります。またこの点に関して、企業にとって2号特定技能外国人を雇うことは、高度な技能を持つ人材を長期的に確保することに繋がり、特定技能2号への移行を望む外国人を採用するモチベーションになるともいえます。
これに対し、技能実習制度においては、原則5年で母国に帰国しなければならないため将来のキャリアを日本で描きにくいという問題があります。しかし特定技能1号への移行は容易なため、技能や日本語能力が特定技能1号ないし2号の水準に満たない外国人にとっては、特定技能1号への移行を見据えたキャリアプランのスタート地点となります。
専門家に相談するメリット
外国人を雇用するということは様々な手続きが必要であり、またそれら は煩雑なのが実情です。こういった問題は、行政書士などの専門家に相談・依頼することで、手続きの正確性とスピードを確保することで解決することが可能です。
当事務所のサポート内容及び具体的な対応事例
JAPAN行政書士法人は特定技能外国人の雇用に必要なビザ申請や在留資格の取得支援、さらに労働契約や雇用管理に関するアドバイスを提供しております。どんなに些細なご相談でも構いませんので、どうぞお気軽にご相談ください。