【2025年最新】技能実習2号から特定技能1号へスムーズに移行するには?実務上のポイントと注意点を専門家が徹底解説

 近年、技能実習生を受け入れている多くの企業様から「現在の技能実習生を、技能実習終了後も特定技能外国人として引き続き雇用したい」とのご相談をいただく機会が大幅に増えています。

同じ職場で引き続き就労できることは、実習生にとっても企業にとっても大きなメリットです。特に日本での就労環境や生活環境に既に慣れている外国人材が、そのまま特定技能外国人として就労を継続できれば、採用や教育にかかるコストを削減でき、即戦力としての活躍も期待できます。

しかしながら、実際に技能実習2号から特定技能1号へ移行するためには、複数の要件や手続きが存在し、それらを正しく理解していなければスムーズな移行は難しくなります。

本記事では、在留資格に精通した行政書士としての視点から、技能実習2号から特定技能への移行に関する要件やメリット、注意すべき実務上のポイントについて、詳しく解説してまいります。

技能実習2号から特定技能1号への移行は2つのルートがある

まず前提として、技能実習から特定技能への移行には2つのルートがあります。これらを明確に理解しておくことが非常に重要です。

① 試験合格による特定技能1号取得

このルートでは、特定技能1号に求められる以下の2つの試験に合格する必要があります。

  • 特定技能評価試験(分野別)
  • 日本語能力試験(N4以上)または日本語基礎テスト

この方法は、技能実習を修了していない方や、技能実習時とは異なる分野で特定技能として働きたい方が主に対象です。たとえば、「技能実習では建設分野だったが、今後は飲食料品製造業分野で働きたい」という場合、分野が異なるため試験合格による要件充足が求められます。

海外から新規に特定技能人材を招へいする場合も、原則としてこの試験合格ルートになります。

② 技能実習2号の「良好修了」による無試験移行

二つ目のルートは、技能実習2号を「良好に修了」している外国人に認められている無試験での移行です。これは非常に大きなメリットがある制度で、試験に合格することなく特定技能1号への変更が可能となります。

では、「良好修了」とは何を指すのでしょうか?

主に以下の3つの条件(1+(2or3))を満たす必要があります

  1. 技能実習計画(2年10か月以上)を修了していること
  2. 技能検定3級・随時3級または技能実習評価試験(専門級)に合格していること
  3. または、評価調書によって技能・勤務態度が適正であると証明されていること

ただし、上記の試験(専門級)に不合格で評価調書の作成も困難な場合であっても、以下の条件に当てはまる場合は例外として試験や評価調書の提出を省略することが可能です。

  • 技能実習での受入企業が、特定技能移行後も引き続き雇用を予定していること
  • 当該企業が過去1年以内に技能実習制度上の「改善命令」や「改善指導」を受けていないこと

冒頭でも述べましたが、このように技能実習を適正に修了し、または一定の要件を満たすことで、技能実習2号から特定技能1号に移行できるという仕組みは、実習生・企業双方にとって非常に魅力的です。

特定技能1号へ移行する際の注意点と実務上のハードル

技能実習2号を良好修了している場合、確かに移行のハードルは下がりますが、一方では注意すべきポイントも多く存在します。主なポイントを2つ解説します。

1. 実習計画の途中での移行は原則不可

技能実習2号の「2年10か月以上の修了」は移行の大前提であり、その途中で特定技能に切り替えることは制度上、原則として認められていません。例えば「1年半で特定技能へ変更したい」といったケースは制度上の想定外であるため、必ず所定の実習期間を完了してから移行を検討する必要があります。

またこの場合でも、先述した①「特定技能評価試験(分野別)+日本語能力試験(N4以上)または日本語基礎テストの合格」による特定技能1号への移行は妨げられません。

しかし制度上可能とはいえ、実際には次のようなリスクや注意点があります。

● 企業側の理解と協力が必要

技能実習の受け入れ企業が「技能実習途中終了」を好ましく思わない場合、特定技能への移行にあたり雇用契約の締結や支援計画の作成が難しくなることもあります。勝手に移行を進めると「計画外離脱」扱いになり、実習生にも企業にも悪影響を及ぼす可能性があります。

● 実習の途中終了はマイナス評価になり得る

技能実習制度は「日本の技能を学ぶための制度」であり、途中離脱が頻発すると制度そのものへの信頼性が問われることになります。そのため、入管や機関によっては、「なぜ途中で終了したのか」という理由説明を求められることも有り、審査で不利になる可能性もあります。

● 特定技能の受け入れ先が必要

試験合格後すぐに特定技能に移行するには、特定技能の雇用契約を結べる企業(特定技能所属機関)を確保しておく必要があります。技能実習とは支援体制や労働条件が異なるため、移行後の就労先も慎重に選定した上で準備しなければなりません。

2. 移行できるのは“対応職種”のみ

技能実習の職種が、そのまま特定技能で就労予定の職種に該当していなければ、無試験での移行はできません。たとえば、「建設」分野の技能実習をしていた外国人が、「外食」分野で特定技能として働く場合には、試験(特定技能評価試験(分野別)+日本語能力試験(N4以上)または日本語基礎テストの合格)による移行を要します。

また、技能実習の作業の中には、特定技能の業務区分として認められていないものもあります。たとえば工業製品製造業分野では、この分野の一部作業が技能実習としては認められていても、特定技能1号の「素形材産業」「産業機械製造業」などの区分に該当しない可能性もあります。この点をしっかりと確認せずに移行を進めると、在留資格変更許可が下りない恐れがあります。

スムーズな移行のための準備と専門家の活用

技能実習から特定技能への移行には、次のような実務上のメリットがあります。

  • 研修コストの削減:既に職場に慣れているため新たな教育コストが不要
  • ミスマッチ防止:能力や人柄を把握している人材の継続雇用が可能
  • 即戦力化:経験済みの業務に即対応可能

一方で、在留資格変更にかかる審査期間は2〜3ヶ月程度(時期や地域によって異なります)が一般的です。このため、技能実習修了の4〜5か月前から準備を始めることが望ましいでしょう。

また、制度や書類に不慣れな企業様にとっては、在留資格の切り替え手続きは非常に煩雑で、書類不備による不許可や審査遅延のリスクもあります。こうした場合、行政書士などの専門家に相談・依頼することで、手続きの正確性とスピードを確保することができます。

まとめ

技能実習2号から特定技能1号への移行は、制度を正しく理解し、計画的に準備を進めることで、多くのメリットを享受できます。受け入れ企業にとっては即戦力の確保とコスト削減、外国人本人にとっては日本でのキャリア継続という双方にとっての“Win-Win”となる仕組みです。

ただし、その裏には制度の要件・制限・書類準備など、専門的な知識が求められる場面が多く存在します。

JAPAN行政書士法人では、外国人材受け入れに特化した行政書士が在籍しており、技能実習から特定技能への移行について多数の実績がございます。ご不明点がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。