技能実習生を現在受け入れている企業様より「技能実習生に、このまま特定技能外国人として働いてほしい」というご相談を頂く機会が増えております。引き続き慣れた環境で就労することができれば、企業様及び技能実習生の双方にとってメリットがあるのではないでしょうか。では実際に、技能実習2号から特定技能1号へ移行する場合、様々なメリットの背景にはどの様な注意点が必要であるかを専門家の視点から解説していきます。
特定技能1号の在留資格取得
まずは大前提として、特定技能1号の在留資格を取得するためには2パターンあります。
一つ目は、特定技能1号評価試験及び日本語能力試験に合格するというパターンでして、技能実習2号を良好修了していない外国人につき、海外から日本に特定技能1号として呼ぶ場合などが代表的な例ではないでしょうか。さらに例を挙げると、既に技能実習生として就労している場合であっても、異なった分野(例えば、建設分野から飲食料品製造業分野へ変更など)への就労を希望する場合には、こうした個別の評価試験合格による特定技能1号への移行が想定されております。
二つ目は、技能実習2号を「良好修了」しているパターンが挙げられますが、「良好修了」とはどのような要件を求めているのでしょうか。具体的には、「技能実習計画を2年10か月以上修了していること」に加えて、「技能検定3級もしくは技能実習評価試験に合格していること」または「評価調書による証明」が要件として必要となります。仮に、上記の試験に不合格で、評価調書の作成が困難な場合でも、現在受け入れている企業様において引き続き受け入れを予定しており、かつ、企業様が技能実習法の「改善命令」や「改善指導」を1年以内に受けていないようであれば、合格証や評価調書は提出が不要となります。
技能実習2号から特定技能1号へ移行する場合の注意点
確かに、上述した技能実習2号の「良好修了」のパターンで同一企業において特定技能1号へ移行する場合、実務経験を既に有している点など様々なメリットがございます。一方、企業様における注意点としては、後述する3点がポイントとなることでしょう。
まず第一に、技能実習2号は「2年10か月以上」という実習計画の修了要件が定められており、左記実習計画の途中において前倒しで特定技能1号へ変更することは想定されておりません。
次に、上述した通り、無試験で特定技能1号に移行することが可能なのは、技能実習時代の作業が特定技能の移行対象職種に含まれている場合のみであり、技能実習修了証明書などによる正確な経歴の把握が重要です。
最後に、技能実習の作業としては存在するものの、特定技能の業務区分には存在しない作業が一定数あり、特定技能への移行が不可能な作業は事前に把握をしておくべきでしょう。
4~5か月前からの準備・検討を
技能実習2号から特定技能1号への移行には、研修コストの削減・ミスマッチ防止など、技能実習生及び企業様の双方にとってメリットがございます。移行に伴う審査期間(2~3ヶ月程度)を見据えて技能実習修了の4~5か月前からの準備・検討が重要である反面、手続きの煩雑さに直面する場面も少なくないので、行政書士などの専門家を頼るのも一つの手ではないでしょうか。